図1:Hermes Agentは20以上のチャネルから呼び出せるセルフホスト型AIエージェントで、タスク完了ごとにスキルを自動生成して賢くなる仕組みを持つ
AIエージェントを業務に取り入れたいと考えているものの、何から手をつければいいかわからない、と感じていないでしょうか。
Hermes Agentとは、米国のオープンソースAI研究組織Nous Researchが2026年2月に公開した、セルフホスト型・自己改善型のAIエージェントです。ChatGPTのようにブラウザで使うチャットサービスではなく、自分のPCやVPS(仮想専用サーバー)、クラウド上に常駐させ、Telegram・Slack・Discordなど20以上のチャネルから呼び出して使う仕組みです。ライセンスはMIT(改変や商用利用を含め、誰でも無料で自由に使えることを認めるオープンソースの利用許諾条件)で本体は無料ですが、実際に動かすにはLLM(大規模言語モデル)のAPI利用料や実行環境の費用が別途かかります。
この記事では、Hermes Agentの仕組み、費用の実態、セキュリティ上の注意点、OpenClawとの違い、導入方法までを一次情報に基づいて整理します。
- Hermes AgentはNous Researchが2026年2月に公開した、MITライセンスで無料のセルフホスト型AIエージェントです(2026年7月8日時点でGitHubスター21万1,000超)。
- 本体は無料ですが、実際の運用にはLLM APIの利用料と実行環境(VPS等)の費用が別途必要になります。
- タスクを完了するたびに「スキル」を自動生成して学習する点が最大の特徴で、OpenClaw等の類似ツールとの違いになっています。
- 公式リポジトリでは権限管理に関する重大な指摘事項が2026年7月時点でも未解決のまま公開されています。
- 非エンジニアでも、国内マネージドクラウドサービスを使えばブラウザ操作だけで導入できます。
Hermes Agentとは何のツール?
Hermes Agentとは、Nous Researchが2026年2月に公開した、タスクをこなすたびに自ら手順を「スキル」として書き出し、次第に賢くなっていくオープンソースのAIエージェントです。開発元のNous Researchは2023年に設立された米国のオープンソースAI研究組織で、Hermes Agentはコードとドキュメントの一式をMITライセンスで無料公開しています。公式リポジトリのGitHubスター数は、2026年7月8日時点で21万1,000を超えています(hermes-agent: The agent that grows with you)。
公開からの伸びも速く、NVIDIA公式ブログは、Hermes Agentがリリースから3か月足らずでGitHubスター14万を突破し、LLM APIの中継サービスOpenRouter上で「最も利用されているエージェント」になったと報告しています。同ブログによれば、設計そのものがプロバイダー・モデルを選ばない構成になっており、常時稼働に適したNVIDIA RTX PCやDGX Sparkのようなハードウェアとの相性を意識した最適化が施されています(Hermes Unlocks Self-Improving AI Agents, Powered by NVIDIA RTX PCs and DGX Spark)。
Hermes Agentは何ができるの?
Hermes Agentは、タスク実行のたびにスキルを自動生成する学習ループ、複数セッションをまたいで記憶を持ち続ける永続メモリ、20以上のチャネルへの同時接続を軸に、日常業務を代行します(学習ループとチャネル接続の詳細は次の項で解説します)。公式サイトでは、これらに加えて次の機能も紹介しています(Hermes Agent — The Agent That Grows With You)。
- 自動スケジュール実行:自然言語で指示したタスクを、指定した日時・周期で自動実行する機能です。
- 子エージェントへのタスク委任:独立した子エージェントに個別のタスクを任せ、並行して処理を進める機能です。
- Web機能:Web検索・ブラウザ操作・画像生成など、Web上の情報収集や作業を代行する機能です。
- サンドボックス実行:プログラムを他の処理領域から隔離した安全な環境(サンドボックス)で実行する仕組みで、ローカル環境やDockerなどのバックエンドから選べます。
モデルへのアクセスは公式ポータル「Nous Portal」経由でも可能で、Free・Plus・Super・Ultraの4段階のプランが用意されています。
どうやって賢くなるの?
前述の学習ループでは、複雑なタスクを完了するたびにその手順をMarkdown形式の「スキル」として書き出し、永続メモリに保存します。次に似たタスクを頼まれたときは、このスキルを再利用するため、同じ指示を繰り返すほど対応が速く・正確になっていく仕組みです。
図2:Hermes Agentは「タスク実行→スキル化→保存→再利用」の学習ループを繰り返すことで、使うほど対応が速く正確になる
どんなチャネルから使えるの?
Hermes AgentはTelegram、Discord、Slack、WhatsApp、Signal、Email、CLIなど20以上のメッセージングチャネルから、同一のエージェントに接続できます。複数のチャットツールを行き来せず、1つのエージェントに窓口を集約できる点が実務上の利点になります。
Hermes Agentは無料で使えるの?
Hermes Agent本体はMITライセンスで無料で、ソースコードを自分のPCやVPSにインストールして動かす分には費用がかかりません。公式ドキュメントによれば、月額5ドル程度の小規模VPSでも稼働でき、DaytonaやModalといったサーバーレス基盤を使えばアイドル時のコストはほぼゼロに抑えられるとされています(Hermes Agent Documentation)。
ただし、Hermes Agentが思考・応答するにはLLMが必要で、OpenAIやAnthropicなどのAPIを従量課金で使うか、Nous Portal経由でモデルにアクセスする場合はプラン料金が発生します。「本体は無料」という言葉だけを見ていると、API利用料や常時稼働のためのサーバー費用を見落としやすくなります。実際の月額コストを見積もる際は、想定するタスク量に対してAPIの利用量がどれくらいになるかを事前に試算しておくことが欠かせません。
Hermes Agentのセキュリティは大丈夫?
図3:Hermes Agentの公式リポジトリで公開されているセキュリティ監査の主な指摘事項
Hermes Agentの公式リポジトリでは、2026年4月時点のバージョン(v0.8.0)を対象にしたセキュリティ監査でCritical(緊急)4件、High(重大)9件の指摘事項が公開されており、2026年7月時点でもオープン状態が続いています(セキュリティ監査Issue #7826)。
監査では、具体的に次のような指摘がなされています。
- シェルコマンドの無制限実行が可能である点
- 拒否リスト(denylist、アクセスを禁止する対象をあらかじめ列挙したリスト)がなく、ファイルシステム全体への読み取りアクセスが可能である点
- コンテナ環境で承認チェックを回避できる経路がある点
- サンドボックスを介さずに永続スキルを実行できる点
監査担当者は「悪意のあるコードやデータ流出は確認されなかったが、デフォルト設定が『すべて許可』寄りで、安全側に強化されていない」と結論づけています。
業務PCに導入する場合は、承認フローを厳格に設定したうえで、読み取り・書き込みの範囲を限定して使うことが望ましいといえます。特に機密情報を扱う部署では、運用管理の手間を事業者側に委ねられるマネージドクラウド環境も選択肢の一つになります(ただし、後述の監査指摘事項はセルフホスト・マネージドを問わず設計上共通する課題であり、マネージドクラウドの利用が指摘事項の解消を意味するものではありません)。自律型AIエージェント全般に共通するリスクや設定の考え方は、【2026年版】OpenClawセキュリティ実務ガイド:危険ポイントと"安全寄りの設定"チェックリスト でも整理しています。
Hermes AgentとOpenClawは何が違うの?
Hermes AgentとOpenClawは、どちらもセルフホスト型でMITライセンスの無料AIエージェントですが、Hermes Agentはタスクごとにスキルを自動生成する学習ループ、OpenClawは多数のチャネルに対応するゲートウェイ型(複数の入出力窓口を一つの経路に集約する構成)の汎用性が、それぞれ最大の強みという違いがあります。
OpenClaw は、Peter Steinberger氏とコミュニティが開発したセルフホスト型AIエージェントで、23以上のメッセージングチャネルに対応するゲートウェイ構成と、操作可能なライブCanvas UIを特徴とします。公式リポジトリによれば、2026年7月8日時点でのGitHubスター数は38万2,000を超えており、開発コミュニティの規模でもHermes Agentを上回っています(OpenClaw公式リポジトリ README)。
図4:Hermes AgentとOpenClawの主な違い。学習ループを重視するか、多チャネル対応の汎用性を重視するかで選び方が分かれる(出典:Hermes Agent公式リポジトリ、OpenClaw公式リポジトリ)
| 比較項目 | Hermes Agent | OpenClaw |
|---|---|---|
| 開発元 | Nous Research(AI研究組織) | Peter Steinberger氏とコミュニティ |
| ライセンス | MIT(無料) | MIT(無料) |
| 対応チャネル数 | 20以上 | 23以上 |
| GitHubスター数(2026年7月8日時点) | 21万1,000超 | 38万2,000超 |
| 最大の特徴 | タスク完了ごとにスキルを自動生成する学習ループ | 多チャネル対応のゲートウェイとライブCanvas UI |
上表の数値・特徴は、Hermes Agentは前掲の公式リポジトリ、OpenClawはOpenClaw公式リポジトリの記載に基づいています(いずれも2026年7月8日時点の確認)。
業務で長期的に同じ担当領域を任せ、使うほど手順を覚えていく成長を重視するならHermes Agent、対応チャネルの幅広さや既存のマルチプラットフォーム連携を優先するならOpenClawが選択肢になります。どちらも無料で試せるため、まずは小さなタスクを任せて挙動を比較するのが現実的です。
Hermes Agentの公式サイトはどれ?
Hermes Agentの公式な情報源は、Nous Researchの公式ドメイン(nousresearch.com)配下にある公式サイトと公式リポジトリの2つです。それ以外のドメインが公式であるとの確証は取れていません。
「hermes-agent.org」「hermesagent.agency」「hermesagents.net」など、Hermes Agentの名前を冠した類似ドメインが複数存在しており、検索結果で見かけることもあります。本記事の調査時点では、これらのサイトがNous Researchによって公式に運営されていることを示す情報は確認できませんでした。次の導入方法で紹介するインストールコマンドを実行する際も、URLがnousresearch.comのドメイン配下になっているかを必ず確認してください。
Hermes Agentはどうやって導入するの?
Hermes Agentの導入方法は、自分のPCやVPSに直接インストールするセルフホスト型と、非エンジニア向けの国内マネージドクラウドを使う方法の2ルートがあります。
エンジニア・技術者向け:セルフホストで導入する
公式サイトでは、Linux・macOS・WSL2・Android(Termux)向けにcurlコマンドでのワンライナーインストール、Windows向けにPowerShellでのインストールコマンドが用意されています。前項の通り、以下のコマンドはnousresearch.comドメイン配下のURLのみを使用しています。
Mac / Linux / WSL2 / Android(Termux)
curl -fsSL https://hermes-agent.nousresearch.com/install.sh | bash
Windows(PowerShell)
iex (irm https://hermes-agent.nousresearch.com/install.ps1)
インストール後は hermes setup --portal を実行することで、1回のOAuth認証(IDやパスワードを直接渡さずに、限定した権限だけを外部サービスへ許可する認証の仕組み)だけで、モデルと検索・画像生成・音声合成・ブラウザ操作の4つのツールに接続できます。技術者向けのセルフホスト手順やネットワーク・権限設計の考え方は、【OpenClawの導入ガイド】個人PCで安全に試す最短手順&企業PoC導入(権限・ネットワーク設計まで) でも共通する部分が多く参考になります。
非エンジニア向け:マネージドクラウドで導入する
マネージドクラウドとは、サーバーの構築・保守を提供事業者側が代行し、利用者はブラウザ操作だけで使えるサービス形態のことです。セルフホストのようにVPSの契約や環境構築が不要な分、非エンジニアでも扱いやすくなります。ただし、前述のセキュリティ監査の指摘事項はHermes Agent自体の設計に起因するため、マネージドクラウドを使っても自動的に解消されるわけではない点には注意してください。
まとめ
Hermes Agentは、Nous Researchが2026年2月に公開した、MITライセンスで無料のセルフホスト型・自己改善型AIエージェントです。この記事のポイントを整理します。
- Hermes Agentとは:タスクを完了するたびにスキルを自動生成する学習ループと、20以上のチャネルへの同時接続が最大の特徴で、公開から短期間でGitHubスター21万超まで急成長した
- 費用:本体はMITライセンスで無料だが、実際の運用にはLLM APIの利用料や実行環境(VPS等)の費用が別途必要になる
- セキュリティ:公式リポジトリで権限管理に関する重大な指摘事項(Critical 4件・High 9件)が未解決のまま公開されている
- OpenClawとの違い:学習ループを重視するHermes Agent、多チャネル対応のゲートウェイ型の汎用性を重視するOpenClawで、選び方が分かれる
技術者であればセルフホストで、非エンジニアであれば国内マネージドクラウドで、まずは小さなタスクから試してみることが、Hermes Agentが自社の業務に合うかどうかを判断する一番確実な方法です。
出典一覧
- 「hermes-agent: The agent that grows with you」 — Nous Research
- 「Hermes Agent — The Agent That Grows With You」
- 「Hermes Agent Documentation」
- セキュリティ監査Issue #7826 — Nous Research公式リポジトリ(公開日:2026-04-11)
- 「Hermes Unlocks Self-Improving AI Agents, Powered by NVIDIA RTX PCs and DGX Spark」 — NVIDIA(公開日:2026-05-13)
- OpenClaw公式サイト — OpenClaw
- OpenClaw公式リポジトリ README
※この記事は2026年7月8日時点の公式情報に基づいています。料金・仕様やセキュリティ監査の状況は変更される可能性があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。
関連サイト
- Nous Research — Hermes Agentの開発元。オープンソースの言語モデル・エージェント研究を手がける米国の研究組織
- Nous Portal — Hermes Agentからモデルにアクセスできる公式ポータル。Free・Plus・Super・Ultraの4段階のプランを提供