Google I/O 2026とGoogle Cloud Next '26の最大の発表は、Vertex AIのGemini Enterprise Agent Platformへの統合とGemini 3.5の登場、そしてAIエージェント開発を中心に据えたインフラの全面刷新です。
Key Takeaways
- Vertex AIが「Gemini Enterprise Agent Platform」に統合・移行(詳細な移行スケジュールは公式ドキュメントを参照)
- Gemini 3.5 Flashはコストが競合モデルの半額以下で、速度と性能のバランスを改善
- Google APIs(Maps・BigQueryなど)がMCPサーバーに対応し、AIエージェントが既存APIを直接操作可能に
- Antigravity 2.0でマルチエージェント開発環境が標準化
- Googleのインフラ投資は4年間で約310億ドルから最大1,850億ドルへ(報道ベース)
2026年、GoogleはAIエージェント時代への本格移行を宣言しました。
2026年4月にラスベガスで開催されたGoogle Cloud Next '26、そして5月のGoogle I/O 2026 ── この2大イベントでGoogleが示したのは、AIをツールとして「使う」フェーズから、AIがタスクを自律的に「実行する」フェーズへの明確な移行です。今回の発表が自分たちの開発・業務にどう影響するか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、開発者・ビジネスパーソンの方が今すぐ押さえておくべき重要発表を解説します。
Google Cloud Next '26(4月22〜24日、ラスベガス)
32,000人以上の開発者・パートナーが集結し、Googleは3日間で260件の発表を行いました。史上最大規模のこのイベントで、キーワードは一貫して「エージェント(Agentic AI)」でした。
1. Vertex AIの統合と「Gemini Enterprise Agent Platform」の誕生
最大のサプライズはブランド戦略の転換です。長年Google Cloudの機械学習基盤として機能してきたVertex AIが「Gemini Enterprise Agent Platform」として統合・移行されます。(Vertex AIの概要についてはこちらの解説記事も参考にしてください。)
Googleはこれにより「モデル単体」ではなくAI開発から運用まで一貫したAI企業インフラで戦う戦略を明確にしました。OpenAI・Anthropicとの競争上の意思表示でもあります。技術チームがAIエージェントの構築・運用・管理・最適化をこのプラットフォーム一つで完結できる設計になっています。
実務への影響: 既存のVertex AI APIの継続サポート期間・移行手順についてはGoogle Cloud公式ドキュメントをご確認ください。現時点では段階的な統合・移行が進められる見込みです。移行計画の第一歩として、まず社内の既存Vertex AI利用箇所をリストアップすることをおすすめします。
2. AIインフラの大幅強化:第8世代TPUとVM新シリーズ
GoogleはAI専用チップ「TPU(Tensor Processing Unit)」の第8世代として2種類を発表しました。
| モデル | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| TPU 8t | 学習・トレーニング | 高速化に特化 |
| TPU 8i | 推論 | コスト効率重視、低レイテンシ設計 |
さらに、AIエージェントや業務継続に不可欠なデータベース処理に最適化された新VMシリーズC4NとM4Nも発表されました。エージェントが24時間稼働し続けるための基盤整備が本格化しています。
Googleの設備投資額は2022年の約310億ドルから2026年には最大1,850億ドルへ──わずか4年で約6倍に達しています(報道ベース)。
3. MCP(Model Context Protocol)のフルサポート
AIエージェントがツールやAPIと通信するための標準プロトコル「MCP(Model Context Protocol)」について、GoogleはMaps・BigQuery・Compute Engine・Kubernetes Engineへの運用管理不要のMCPサーバーの提供を開始しました。APIゲートウェイのApigeeが「API-to-MCPブリッジ」として機能し、既存のREST APIを自動的にMCPツールへ変換できます。
これにより、企業が持つ既存のシステム資産をAIエージェントが直接操作できる道が開きます。
4. クロスクラウド・レイクハウス(旧BigLake)
データレイクとデータウェアハウスを統合したアーキテクチャ「レイクハウス」のクロスクラウド版が刷新されました。旧BigLakeからの進化版で、オープンテーブル形式の一種であるIceberg REST Catalogを採用しています。AWS・Azureを含む広範なパートナーエコシステムのデータへ横断的にアクセスでき、エージェントがマルチクラウド環境をまたいでデータを参照・操作することが可能になりました。
5. Google Workspaceのエージェント化
Workspace Studioでは、プログラミング不要のエージェントビルダーにより Gmail・Docs・Sheets上で業務エージェントを作成できるようになりました。新機能Workspace Intelligenceがリアルタイムで状況を把握し、エージェント型の業務フローを加速します。
ビジネス視点: まずは「承認フロー自動化」など定型業務からエージェント活用を試すのが現実的なFirst Stepです。
Google I/O 2026(5月19〜20日)
Google Cloud Next '26がAIエージェントのインフラと企業向けプラットフォームを整備したとすれば、I/O 2026はその上で動く開発体験とモデルの刷新に焦点を当てました。
Google I/O 2026は、毎年恒例の開発者向け最大イベントです。今年は「モデルの進化」と「エージェント開発の民主化」が主役でした。
6. Gemini 3.5シリーズ登場
Gemini 3.5 Flashは、コーディング・エージェント処理・テキスト・画像・音声・動画など複数の入力形式(マルチモーダル)にわたる処理において前世代モデルを上回る性能を示しました。コストは競合モデルの半額以下で、速度と性能のバランスが改善されています。
Gemini Omniはあらゆる入力形式に対応した次世代マルチモーダルモデルで、特に動画理解・生成において大幅な性能向上を遂げました。キーノートでは動画生成能力の高さを示す「動画版Nano Banana」という比喩表現も使われました。なお、Gemini 3.5 Flashがコスト・速度最適化に特化しているのに対し、Gemini Omniはマルチモーダル処理能力そのものの拡張を主眼としている点で位置づけが異なります。
7. Antigravity 2.0:エージェント開発環境の誕生
Googleが新たに立ち上げたエージェント開発環境ブランド「Antigravity」の第2世代として、Antigravity 2.0と専用CLIが発表されました。エージェントを操作・カスタマイズ・統合制御(オーケストレーション)する集中ワークスペースを提供するスタンドアロンデスクトップアプリで、主な特徴は以下の通りです。
- IDEインターフェースにエージェントサイドバーを統合した開発ビュー
- 複数エージェントを並列実行・管理するコントロールパネル
- クロスプラットフォームのターミナルサンドボックス(隔離された実行環境)、認証情報の自動伏字機能、強化されたGitポリシーを標準装備
複雑なワークフローを複数のサブエージェントに分割して処理させる「マルチエージェントオーケストレーション(複数処理の統合制御)」を、Googleはエージェント開発の標準スタイルと位置づけています。
8. Gemini APIのManaged Agents
Gemini APIのManaged Agentsにより、エージェント用インフラのセットアップが不要になりました。シングルAPI呼び出しで、隔離された実行環境(リモートサンドボックス)付きの完全プロビジョニング済みエージェントが即座に起動します。
9. コンシューマー向け発表
- Gemini Spark:GeminiエンタープライズおよびGoogle Workspaceユーザー向けに提供される、24時間体制で日常業務をサポートするパーソナルAIエージェントです
- Universal Cart:Google検索・Gemini・YouTube・Gmailなど、Googleの各種サービスを横断して機能する共通ショッピングカートです
- Google Pics:新しい画像生成・編集ツールです
- スマートアイウェア(Android XR):ナビ・テキスト送信・写真撮影がスマートフォン不要で実現します
開発者が今すぐ取るべきアクション
| 優先度 | 対象 | アクション |
|---|---|---|
| 高 | エンジニア | 公式移行ガイドを確認し、既存のVertex AI利用箇所をリストアップする |
| 高 | エンジニア | Gemini 3.5 FlashをGoogle AI Studioで試し、既存ワークフローへの適用を評価する |
| 中 | エンジニア | MCP対応の検討:既存REST APIをエージェント対応化できるか確認する |
| 中 | エンジニア | Antigravity 2.0 CLIを開発環境に導入し、マルチエージェント設計を探索する |
| 低 | ビジネスパーソン | Google Workspaceのノーコードエージェントで業務自動化の小さな実験を始める |
まとめ
Google Cloud Next '26とGoogle I/O 2026を通じて、Googleが打ち出したメッセージは明確です。
「AIはもはやアシスタントではない。エージェントとして、あなたの代わりに動く。」
今回の発表は3本の柱に集約できます。
柱1:インフラの全面刷新(セクション1〜2)Vertex AIのGemini Enterprise Agent Platformへの統合、第8世代TPUと新VMシリーズによる基盤整備。
柱2:エージェントのオープン化(セクション3〜5)MCP対応・クロスクラウドレイクハウス・Workspaceエージェント化により、企業の既存資産がAIエージェントから直接操作可能になりました。
柱3:開発体験の革新(セクション6〜9)Gemini 3.5・Antigravity 2.0・Managed Agentsにより、AIエージェント開発の参入障壁が大幅に低下しました。
インフラ投資は4年で約6倍に達し、Googleが「エージェント時代のインフラ企業」としての地位確立を目指していることは明らかです。今こそ実験を始める最良のタイミングではないでしょうか。日本企業のAIエージェント実践事例についてはAgentic AI Summit '26 基調講演まとめも参照ください。