はじめに
今回は、Google Cloud™ が提供する AI プラットフォーム「Vertex AI™(バーテックス エーアイ)」について、専門知識がなくても理解できるように、できるだけやさしい言葉で解説していきます。
AIを使った開発や業務活用に興味はあるけれど、「難しそう」「何から始めればいいか分からない」という方に向けて、実際の仕事で役立つ視点や注意点も交えてご紹介します。
Vertex AIってなに?

企業向けの「AI開発・運用の工作室」みたいなものです。
Vertex AI は、AIを使った仕組み(たとえばチャットボットや予測モデル)を作るところから、テスト、実際の業務への導入、その後の改善・管理までを一貫してサポートしてくれるクラウドサービスです。
普通なら、AIを活用するにはいくつものツールやサービスを組み合わせて使う必要がありますが、Vertex AIを使えば、**「ぜんぶここで完結できる」**というのが大きな特徴です。
▶ Google 公式の定義では、「AIの学習と利用をまとめて行える統合プラットフォーム」と説明されています。 → Google公式ドキュメント
今知っておきたい Vertex AI のポイント(2025年版)
① 最新のAIモデル「Gemini 2.5 Pro」が登場(2025年6月17日 GA)
- より高性能な会話や推論が可能になり、日本国内(東京リージョン:asia-northeast1)でも利用可能になりました。 → モデル紹介ページ
② 200種類以上のAIモデルが使える「Model Garden」(※2025年10月現在)
- Google公式だけでなく、他のAI企業やオープンソースのモデルもまとめて選べます。 → モデル一覧はこちら
③ AIエージェントを作れる「Agent Builder / Engine」
- 自動応答や社内情報検索など、人の代わりに働くAIを自分で組み立てて使えます。 → エージェント概要
④ 情報管理やセキュリティにも強い
- 企業向けの機能として、**日本国内でのデータ処理(データレジデンシ)や暗号化の設定(CMEK)**なども対応。 → セキュリティに関する情報
Vertex AI でできること(ざっくりマップ)
| カテゴリ | 概要 |
|---|---|
| ✨ 生成AI | GeminiやClaudeなどの会話AIを使える。 |
| UIで試す→コードで実装。 | |
| 📊 従来型ML | 表データや画像などを使ってAIを自動で学習。 |
| AutoMLや手動学習も対応。 | |
| 🔎 検索連携(RAG) | 社内文書からAIが答える仕組み。 |
| 根拠付き回答ができる。 | |
| 🔧 MLOps | AIモデルの管理・評価・監視などを一元化できる。 |
※RAG機能のセキュリティ対応は機能ごとに異なります。たとえば Vertex AI RAG Engine は VPC-SC や CMEK に対応していますが、Data Residency(地域内処理)は対象外です。Vertex AI Search の一部 RAG API(grounded generation やランキング)も CMEK 非対応です。用途に応じて確認が必要です。
▼Vertex AI 導入をご検討の方は、こちらのサービスがオススメです。
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どうして Vertex AI が選ばれるの?
- ✅ 安心のセキュリティ設計 日本国内でのデータ処理や、お客様自身の暗号鍵を使う設定など、企業にとって安心できる仕組みが用意されています。
- ✅ 世界中で使える 日本(東京リージョン)を含め、世界各国で利用できる設定があります。→ 対応リージョン一覧
▼「リージョン」とは?
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- ✅ 使いやすいSDK(開発ツール) 「Google Gen AI SDK」 を使えば、Vertex AI と Developer API のどちらにも、同じコードでアクセスできます。
- ✅ たくさんのモデルから選べる AIのモデルは目的に応じて選ぶのが大事。Googleだけでなく、他社やOSSのモデルも一覧で探せます。
実務でのはじめ方(コンソール画面で操作する方法)
- Google Cloud のプロジェクトを作成し、料金設定を有効にする
- Vertex AI API をONにし、必要な権限(例:
aiplatform.user)を付ける - 「Vertex AI Studio」でGeminiなどのAIを試してみる
- 「Model Garden」で必要なモデルを探して使えるようにする
- 本番導入時は、東京リージョンやセキュリティ要件をしっかり合わせる
Pythonでの使い方(コードで試す方法)
以下のようなPythonコードで、Vertex AIのモデルを呼び出して使うことができます:
from google import genai
client = genai.Client(
vertexai=True,
project="YOUR_GCP_PROJECT_ID",
location="asia-northeast1" # 東京リージョン
)
resp = client.models.generate_content(
model="gemini-2.5-pro",
contents="Vertex AI の主な構成要素を3つだけ箇条書きで教えてください。"
)
print(resp.text)
💡 この方法なら、Vertex AI と Developer API の両方を同じコードで切り替えて使えます。 ※実行前に認証設定(ADCやAPIキー)をしておく必要があります。
よくある使い方とそのポイント
| ユースケース | 使う機能 | 注意点 |
|---|---|---|
| 社内Q&A | RAG Engine | セキュリティ設定(CMEK対応か)を事前に確認 |
| ナレッジワーカー向け | Agent Builder | 複数エージェントや外部連携が可能 |
| データ分析や予測 | AutoML Tabular | 前処理〜評価まで自動化。 |
| 再現性あり | ||
| 高度なAI学習 | Custom Training | 自由度が高く、プロ仕様 |
セキュリティに関する大事な話

- データの置き場所を選べる たとえば「東京リージョン内だけで処理」など、どこでデータを扱うかを決められます。社内ルールや法規制に合わせやすくなります。
- 外に漏れにくい仕組みがある
- 社内ネットワークで閉じる(VPC) インターネットから直接触れない専用ネットワークの囲いを作り、外部からのアクセス経路を減らします。
- 自社の鍵で暗号化(CMEK) 保存中のデータを自分たちが管理する鍵で暗号化。鍵のローテーションや失効も自社ポリシーで運用できます。
- 権限は必要最小限にできる アカウントごとに「見るだけ」「実行は不可」など細かく設定(IAM)でき、誤操作や内部不正のリスクを下げられます。
[Google Cloud Vertex AIついてのお問い合わせ]
料金とコストの考え方
Vertex AIは**「使った分だけ費用が発生する従量課金型」のサービスです。費用はモデルの種類・使い方・利用量**によって大きく変わります。
| 視点 | 概要 |
|---|---|
| ① モデル選定 | 高性能モデルほど高額 |
| (例:Gemini 2.5 Pro) | |
| ② 利用量 | |
| (トークン) | 入力・出力のトークン(文字)量が多いほど高くなる |
| ③ 処理方法 | 自動学習や独自学習はマシン使用料が発生(AutoML等) |
かんたんシミュレーション(Gemini 2.5 Pro)
「Vertex AIって、結局いくらかかるの?」
そんな方のために、よくある利用例ごとに料金の目安をご紹介します。
このシミュレーションでは:
- 1ドル=150円(レートは目安)
- 1文字=だいたい0.25〜1トークン
- モデルは Gemini 2.5 Pro(高性能モデル) を使ったときの料金をざっくりと試算しています。
※実際の料金は、使うモデルの種類・文字数・使い方(キャッシュの有無など)で変わります 正確な料金は公式ページをご確認ください:
よくある利用例とその料金目安
| 利用シーン | どんな使い方? | 月額の目安(概算) |
|---|---|---|
| 社内向けチャットボット | 月100回 × 1000文字くらい | 約 ¥40〜170 /月 |
| 社外からの問い合わせ自動応答 | 月1000回 × 1500文字くらい | 約 ¥630〜2,530 /月 |
| 週1回の資料要約 | 月4回 × 1万文字をAIで要約 | 約 ¥20〜70 /月 |
| AIモデルの学習(AutoML) | 1〜2ノードで3時間の学習 | 約 ¥1,500〜3,100(1回あたり) |
💡 入出力の合計トークン数によって価格が変わります。 出力トークン(AIが返す文の長さ)の方が単価が高い点もポイントです。
トークン単価(参考)
- 入力:$1.25/100万トークン
- 出力:$10.00/100万トークン(Gemini 2.5 Pro)
たとえば「1000文字のやりとり」を月100回すると、
おおよそ「10万〜40万トークン」くらい使うイメージです。
AutoMLの学習費用って?
自分のデータを使ってAIモデルを学習させる場合(AutoML)は、
マシンのスペック × 学習時間 × ノード数(並列数) で料金が決まります。
- 例:1ノードあたり $3.465 / 時間
- 学習時間:3時間 × 1ノード = 約 ¥1,560
👉 使うデータの量や精度の要件によっても変わります。
詳細はこちら → Vertex AI AutoML 料金表(Google公式)
コストを抑えるためのポイント
| 工夫できるところ | 具体的な方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 軽量モデルを選ぶ | Gemini 2.5 FlashやFlash-Liteはかなり割安 | 月数百円から検証可能 |
| プロンプトを最適化 | 無駄な言葉や重複を減らし、返答も短くする | 出力トークン削減 → 安くなる |
| キャッシュを使う | 同じやりとりは「暗黙キャッシュ」で再利用 | 最大90%ディスカウント |
| 安定版モデルに固定 | モデルのアップデートによる想定外の再試行を防ぐ | 料金ブレを防止できる |
補足:キャッシュとは?
AIのやりとりを一部記憶して再利用する仕組みです。
「似た質問・同じ内容」にはキャッシュが効いて料金が安くなる可能性があります。
| キャッシュの種類 | 特徴 | 料金 |
|---|---|---|
| 暗黙キャッシュ | 自動的に使われる | 最大90%オフ |
| 明示キャッシュ | 自分で設定して保存 | 保存料あり(例:$4.5/100万Tok-時) |
補足:一部のAPI(Batch API)はまとめて処理することで割安に。 Gemini + Google検索やMaps連携(Grounding)は、無料枠が設定されている機能もあります。
よくある質問と対策
| よくある質問 | 回答のポイント |
|---|---|
| どのSDKを使えば? | 「Google Gen AI SDK」ならどちらのAPIでもOK |
| 東京リージョンで使える? | Gemini 2.5 Pro は asia-northeast1 に対応 |
| エラーになる? | 権限不足・リージョン間違いが多い。まず確認 |
まとめ
| トピック | 要点 | 公式ドキュメント |
|---|---|---|
| Vertex AI の位置づけ | 生成AI+従来ML+MLOpsの統合基盤 | (Google Cloud Documentation) |
| 最新モデル | Gemini 2.5 Pro | |
| (2025-06-17 GA、東京対応) | (Google Cloud) | |
| モデル選定 | Model GardenでGoogle/パートナー/OSSを一元管理 | |
| (SFT可否はモデル依存/2.5 ProもSFT対応) | (Google Cloud) | |
| 使い方の最短経路 | Studioで試す→Gen AI SDKで実装 | (Google Cloud) |
| セキュリティ | データレジデンシ、VPC-SC、CMEKの対応表を確認 | |
| (RAG APIの一部は Data Residency/CMEK 非対応) | (Google Cloud) | |
| RAG/エージェント | RAG Engine、Agent Builder / Agent Engine を用途別に | (Google Cloud Documentation) |
| 従来ML | AutoML と Custom Training、Pipelinesで再現性 | (Google Cloud Documentation) |
| 料金 | Generative AI と Vertex AI の料金ページを併読 | (Google Cloud Documentation) |
| 権限 | roles/aiplatform.user 付与が出発点 | (Google Cloud) |
公式リンク集
| 用語 | 解説 | 公式 |
|---|---|---|
| Vertex AI | Google Cloud の統合AIプラットフォーム | (Google Cloud) |
| Gemini 2.5 Pro | マルチモーダル生成AIの最上位系 | (Google Cloud Documentation) |
| Model Garden | モデルの発見・評価・導入の場 | (Google Cloud Documentation) |
| Vertex AI Studio | プロンプト実験のUI | (console.cloud.google.com) |
| AutoML Tabular | 表形式データの自動モデリング | (Google Cloud Documentation) |
| Vertex AI Pipelines | MLパイプラインのオーケストレーション | (Google Cloud) |
| Vertex AI Agent Builder/Engine | 企業向けAIエージェントの構築・運用 | (Google Cloud) |
| データレジデンシ | 地域内処理に関するポリシー | (Google Cloud) |
| VPC Service Controls | データ持ち出し境界の構成 | (Google Cloud) |
| CMEK | 顧客管理鍵による暗号化 | (Google Cloud) |
おわりに
Vertex AI は、AIを業務に取り入れたい企業にとって、非常に強力で柔軟なプラットフォームです。最初はとっつきにくく感じるかもしれませんが、小さなプロジェクトから始めて、少しずつ慣れていくのがおすすめです。 Elcamyでは、要件整理からPoC、開発実装・評価まで伴走するVertex AI 導入支援を提供しています。実務導入を検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。
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