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#ビジネス2025.10.30

【導入事例】小売・ECで“定番化”するVertex AI【検索・推薦・在庫まで一気通貫で効く理由】

小売・EC業界におけるVertex AIの導入事例を紹介。商品検索、レコメンド、需要予測などにおいて、明確な目的と測定可能な成果が得られる。CAINZやFamilyMart Taiwanなどの成功事例を通じて、データ設計や運用のポイントを強調し、30日以内のA/Bテスト開始を推奨。AI活用は検索と在庫から始めるのが効果的で、顧客満足と売上向上が期待できる。

はじめに

実店舗とECの垣根がなくなりつつある今、検索体験の質や在庫の精度、レコメンドの的確さは、顧客の購入意思に大きく影響します。これらの「効き所」に、Google CloudのVertex AIはまさに“直球”で効きます。

今回は、Vertex AIの導入事例が特に多い「小売・EC業界」に絞り、最新事例と実装のポイントをわかりやすくご紹介します。各所に参考リンクも添えています。


なぜ小売・ECでVertex AIが選ばれているのか?

  • 目的が明確、成果が測りやすい 商品検索・会話型接客、レコメンド、需要予測、棚割り最適化など、KPIに直結する領域にピンポイントで効きます。Google Cloudのレポートでも、個別最適化と業務効率化(不正検知含む)は主要投資領域とされています。
  • 専用ソリューションが充実 特にECに特化した Vertex AI Search for commerce は、「検索」「会話型UI」「レコメンド」をフルマネージドで提供。導入のしやすさと再現性の高さが強みです。
  • 継続的なアップデート体制 Vertex AI本体やAgent Builder・Search系の機能はリリースノートで随時更新。運用に必要な仕様変更を追いやすく、安心して使い続けられます。

海外・国内の導入事例ダイジェスト

  • CAINZ(日本) 需要予測にVertex AIを活用。データ前処理を最短約50分に短縮し、店舗数に依存しない仕組みに。GoogleのTAP(テック加速プログラム)も活用。
  • FamilyMart Taiwan(台湾) Vertex AI Search for retail(現行のcommerce製品ライン)でパーソナライズ検索を導入。開発期間約3か月で、クリック率が4倍に向上。
  • Lowe’s(アメリカ) 類似画像検索機能「Visual Scout」にVertex AI Vector Searchを採用。画像からの探索体験を向上。
  • Super-Pharm(イスラエル) Vertex AIとBigQueryを組み合わせ、需要予測とマーチャンダイジング最適化を実施。在庫精度を約50%から90%へ改善。
  • Myntra(インド) Imagen 3 on Vertex AI による「Dream Room Inspirations」で、高精細なイメージ生成による体験型ECを実現。

ユースケース別|“効き所”と構築方法

1. 会話型商品検索・レコメンド(CVR向上)

  • やること:従来のキーワード検索に代わる会話UIを用意し、ユーザーのニーズに合わせた商品提案。
  • 構成例:Vertex AI Search for commerce + レコメンド機能。GA4・CDPと連携して行動ログを活用し、構造化データ(価格・在庫など)と統合。
  • 事例:FamilyMart Taiwan(閲覧・購買履歴に基づく最適化)、Lowe’s(画像アップロードで類似商品提示)。

2. 需要予測・在庫最適化(品切れや余剰を防ぐ)

  • やること:SKU × 店舗 × 日単位の需要を高頻度で再学習し、仕入れや棚割りを最適化。
  • 構成例:BigQueryにPOS・プロモ・天候などを集約 → Vertex AIで学習・予測 → MD・WMSに出力。
  • 事例:CAINZ、Super-Pharm。

3. ビジュアル探索・スタイル提案(体験価値向上)

  • やること:「好き/嫌い」や画像からユーザーの嗜好を学習し、似合うスタイルを提案。
  • 構成例:画像・テキストをベクトル化 → Vertex AI Vector Searchで類似探索。Imagen等の生成AIで販促用画像も生成。
  • 事例:Myntra(画像生成による内装提案機能)、Lowe’s。

[Google Cloud Vertex AIついてのお問い合わせ]


成功のために押さえておきたい設計ポイント

  1. データ設計を最初にしっかりと SKUマスタ、在庫、価格、媒体ごとのフィードなどのキーを統一。GA4とPOSでデータ粒度が異なる点にも注意。
  2. プロンプトではなく“明示ルール”で精度を担保 商品DB・在庫・ポリシーなど、事実に基づく情報はAPI/Functionで明示的に接続。
  3. オフライン×オンライン評価を両立 NDCG、MRRなどのオフライン指標と、CVR、AOV、離脱率、検索無効率などの実運用指標の両面で評価。
  4. コスト最適化戦略を明確に 検索・推薦はリクエスト単位課金+キャッシュ戦略がカギ。ピーク時はCDNや結果キャッシュを活用。
  5. リリースノートは定期的にチェック モデルのアップデートやAPI変更に対応できる体制を。

全体アーキテクチャ

  • データ基盤
flowchart LR
subgraph G1[データ基盤]
  direction LR
  DS1[POS]
  DS2[EC]
  DS3[カタログ]
  DS4[画像]
  DS5[GA4]
  BQ[(BigQuery<br/>集約・前処理)]
  DS1 --> BQ
  DS2 --> BQ
  DS3 --> BQ
  DS4 --> BQ
  DS5 --> BQ
end

  • 顧客体験
flowchart LR
  subgraph G3["顧客体験"]
    direction LR
    Front["Web / アプリ / チャット"]
    VSearch["Vertex AI Search for commerce<br/>(会話・検索・レコメンド)"]
    Front --> VSearch
  end

  • ビジュアル探索
%%{init: {"flowchart": {"htmlLabels": true}} }%%
flowchart LR
  subgraph G4["ビジュアル探索"]
    direction LR
    Embed["画像・テキスト埋め込み"]
    VVector["Vertex AI Vector Search<br/>(類似探索)"]
    Embed --> VVector
  end

  • 需要予測
flowchart LR
  subgraph G2["需要予測"]
    direction LR
    BQ[(BigQuery)]
    Train["Vertex AI Training / Batch Prediction<br/>(学習・推論)"]
    Delivery["発注 / WMS / 棚割り へ配信"]
    BQ --> Train --> Delivery
  end

  • 運用・可視化
%%{init: {"flowchart": {"htmlLabels": true}} }%%
flowchart LR
  subgraph G5["運用・可視化"]
    direction LR
    Ops["Cloud Run / Functions<br/>Scheduler / Pub/Sub"]
    Looker["LookerでKPI管理<br/>(可視化)"]
    Ops --> Looker
  end



30〜90日でできるスモールスタートの進め方

期間やること
Day 0–10SKUマスタ・在庫・GA4・検索ログなどの棚卸し。
検索無効率・離脱率のホットスポットを可視化。
Day 10–30Vertex AI Search for commerceをテスト導入。
・Search:$2.50/1000件
・Conversational:$6.00/1000件
(commerce版は無料枠の対象外)
Day 30–60A/Bテスト(検索→商品詳細→カート)でCVRや滞在時間を検証。
Serving controlsで絞り込みやブーストのルール化。
Day 60–90在庫・価格のリアルタイム連携、画像ベクトル探索、店舗スタッフ用パネル表示を構築。

小売・EC × Vertex AI のまとめ表

ユースケース使う主機能必要データ成果指標代表事例
会話型検索・レコメンドVertex AI Search for commerce商品マスタ
在庫
価格
行動ログ検索CVR
NDCG
AOV
離脱率FamilyMart(台湾)
Lowe’s
(Google Cloud)
需要予測・在庫最適化Vertex AI
(Training/Batch Prediction)販売実績
プロモ
天候
カレンダーOOS率
在庫回転
廃棄率CAINZ
Super-Pharm
(Google Cloud)
ビジュアル探索Vertex AI Vector Search
(必要に応じて)Imagen商品画像・メタ情報CTR
滞在時間
回遊率Lowe’s
Myntra
(The Times of India)

用語・サービスのミニ辞典(公式)

  • Vertex AI:学習から推論・運用までを統合したプラットフォーム。
  • Vertex AI Search for commerce:EC向けの検索・会話・レコメンド特化ソリューション。(Google Cloud)
  • Vertex AI Vector Search:大規模なベクトル近傍探索のマネージド基盤(旧称の言及は控え、現行名称で統一)。(Google Cloud Documentation)
  • Serving controls:検索・推薦の振る舞いをルールで制御(ブースト、除外、価格優先等)。(Google Cloud Documentation)

参考リンク

  1. Retail/CPGのAIトレンドまとめ(Google Cloud)
  2. Vertex AI Search for commerce 製品ページ(Google Cloud)(Google Cloud)
  3. リリースノート:Vertex AI / Agent Builder(Google Cloud)(Google Cloud)
  4. 事例:CAINZ(Google Cloud)
  5. 事例:FamilyMart Taiwan(Google Cloud)(Google Cloud)
  6. 事例:Lowe’s Visual Scout(Google Cloud Blog)
  7. 事例:Super-Pharm(Google Cloud)(Google Cloud)
  8. 事例:Myntra × Imagen 3 on Vertex AI(Times of India)(The Times of India)
  9. Vector Search の概要(Google Cloud Docs)(Google Cloud Documentation)
  10. 価格:Search for commerce($2.50/1000検索、会話$6/1000)(Google Cloud)
  11. 価格:Vertex AI Search(一般機能の無料枠 1万クエリ/月)(Google Cloud Documentation)
  12. Serving controls(検索・推薦のルール化)(Google Cloud Documentation)

最後に

小売・ECにおけるAI活用は、「まず検索と在庫」から始めるのが成功の近道です。今日の検索体験と在庫の見える化だけでも、売上と顧客満足の同時向上が狙えます。

要件やデータ環境が整ってきたら、ぜひ 30日以内のA/Bテスト開始 を前提に、一緒に設計を始めましょう。

Elcamyでは、「Vertex AI導入支援」を行っています。「自社でも活用できそう」と感じた方は、導入の進め方や実現可能性のご相談など、ぜひお気軽にお問い合わせください。